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‘14年夢日記 「『倉庫番』を読む」

2014(H26)年8月16日(土) 雨時々曇り

   タイトル 「『倉庫番』を読む」

 「倉庫番」は、「民主文学」9月号に掲載された短編小説だ。作者は、意欲的に小説を書きつづけている石井斉である。石井斉の作品は好きで、いままでほとんど読んできている。その作品のどれもが、統合失調症を患っている人物が主人公である。彼は根気強く統合失調症をモチーフ・テーマにして書いている。

 「倉庫番」も例にもれず、統合失調症の「僕」が主人公である。私も若い時、統合失調症のような症状が出たことがあるので、そのようすは少し分かる。また、いまブログで毎日、統合失調症の方の記事を読んでいるので、私にとっては比較的身近な問題である。だから、この「倉庫番」も興味を持って読むことができた。

 まず、作品の創り方からいうと、巧くなったなあという印象がある。「『青ちゃあん、元気』女性が、二十メートル先から僕の隣に座る青田昇一に手を振った」と、冒頭に書いている。そして、作品の結末近くで、「『青ちゃあん、元気』二十メートル先から紫色の女性がペンギンのように歩いてくるのが見えた」と書いている。

 これは、恋なのか友情なのかよく分からないが、最初と最後に、この「紫色の女性」を配している。また、「統合失調症を患う僕と青田は、仕事の昼休みに、百日紅がある道路の端の地面に座るのが習慣だった」と、小説の初めに書いている。そして、小説の結末はこうだ。「道路の端の百日紅が桃色に咲き誇っていた」、と結んでいる。

 このふたつの記述は、最初から計算されていたものかどうかは分からないが、これが小説の中で生きている。「巧い」と感ずるところである。さて、主人公の僕は、障害者の職場適応訓練制度で、青田と倉庫の整理や搬出、搬入の仕事をしている。厚生労働省の就労支援で一日2500円支給され、それとは別に南光製袋工業から2000円上乗せされる。つまり、一日4500円である。

 作品は、倉庫番の仕事を、リアルに描出しており、その仕事の在りようが非常によくわかる。ここで、その一つひとつを述べなくてもいいが、読者によく分かるように仕事の内容を、描き出す力量を感ずることができる。読者によく分からない職場風景を描いている作品もあるが、これは適切に書かれているということができるだろう。

 またこの作品は、人物の描き分け方がすぐれた小説である。とくに、僕と青田の人物像をくっきりと描き分けている。「青ちゃんはな、喋るのが苦手だけど、仕事はできるよ」と、営業の岩山がいうように、その人物像を浮き彫りにしている。「お、俺、喋るの苦手だろ。病気する前から人前だとあがっちゃって、まともに会話できないんだ。でも、よ、横山さんは何か弟みたいなんだ。お、俺、高校中退だし、家は貧乏だし、か、かっこいいわけでもない」と、みずから語っている。

 一方、僕(横山)は、喋るのにそんなに苦労するわけではないが、仕事では出社がいつも青田よりも遅い。仕事ができないというわけではないが、青田のほうが生真面目に仕事に取り組んでいる。しかし、精神障害者への差別や偏見に対しては、鋭い感覚を持ち合わせている。あるとき、大濃運輸の運転手が、青田を馬鹿にして、指示したところに荷物をおろさないことがあった。

 すると、横山(僕)は、烈しく憤って、大濃運輸の営業課長が会社にやってきた時、「あんた、あんたの会社の運転手は何だ。全然教育できてないじゃないか」と詰め寄った。「精神障害者を馬鹿にしやがって」という言葉は呑みこんだけれど、思いはその通りであった。これが、この小説の山場であり、テーマとも関わるところである。

 精神障害者への差別と偏見、それに対する横山(ぼく)の怒り、それを描いたところにこの小説の意義がある。そして、この小説に感心したのは、五感をよく働かせて書いていることだ。音、臭い、色彩、味覚などを描いて、リアリティーを膨らませている。今後が期待される若い作家である。



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 1947年生まれの68歳で、
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