‘14年夢日記 「映画『キネマの天地』を観る」

2014(H26)年8月8日(金) 曇り時々雨

   タイトル 「映画『キネマの天地』を観る」

 映画「キネマの天地」は、山田洋次監督の作品である。これは新人の田中小春(有森也実・田中絹代がモデル)が、映画館の売り子から松竹のスター女優となってゆく物語である。また、父、喜八(渥美清)の人間像も巧みに描いていて見逃すことができない。

 舞台は、松竹が撮影所を大船に移転する直前の1934年頃の松竹蒲田撮影所である。田中絹代がスターへの階段を上りかけた黄金期を背景にしている。田中小春は、映画館の売り子をしていた。小春は旅回りの役者だった父、喜八と長屋で二人暮らしをしている。その長屋には、二人をなにくれとなく世話をしてくれる、ゆき(倍賞千恵子)がいた。

 ある日、小春は支配人から呼ばれる。「俳優にならないか?」というのである。不安ながらも小春は承諾する。しかし、セリフのない看護婦の役もうまくこなせない。小春は落胆して家に帰る。もう俳優はあきらめかけていた。そこへ、島田(助監督・中井貴一)が訪ねてきて、もう一度蒲田に来るように告げる。小春は、「私、女優になれるかしら?」と不安でいっぱいである。

 小春は、大部屋女優になって、セリフのある女中の役をもらえる。が、「いらっしゃいませ」だけのセリフと演技がうまくゆかない。元、旅役者の父、喜八はそんな役を決して莫迦にしてはいけない、と口を酸っぱくして小春に説く。実は、喜八と小春には出生の秘密がある。喜八とゆきは決して小春には打ち明けないと約束している。

 撮影所には不良が多いと島田からも告げられていたが、俳優の井川(田中健)と横浜へ遊びにゆき、二人の噂が広がる。喜八は小春の頬を叩き、「だらしない生活をしていると、芝居に表われる」と烈しく叱る。島田はその頃、元気をなくしていた。「絶望的な撮影所を辞めようと思っている」と、大学の先輩である小田切(平田満)に打ち明ける。

 小田切は、治安維持法違反で、刑事に追われていたが、「生きる望みを与えるような映画をつくってくれ」と島田を励ます。が、彼は刑事につかまり、島田も連行される。そんな暗い時代の物語である。釈放された島田はツルゲーネフの脚本を書くようにいわれる。その主役に決まっていた川島澄江(岡田嘉子がモデル)は、杉本良吉と逃避行を決行する。

 主役がいなくなり、その代役探しが始まるが、ふさわしい人が見つからない。そして、名前が挙がったのが田中小春である。「浮草」の主役に決まると、喜八は神社詣でをして、小春の成功を祈る。しかし、撮影がうまくいかない。「私女優をやめたくなった」と、喜八とゆきに弱音を吐く。その晩、喜八は小春の出生の秘密を明かす。

 実は小春は、喜八の子ではなく育ての親だということを打ち明ける。母は芝居小屋の看板女優だったが、小春は他の男の子どもであることを話す。それを喜八が育てたのである。その翌日、撮影が再開され、クライマックスの場面を小春は迫真の演技をして、オーケーが出る。「浮草」の完成である。上映が始まると、映画館には観客が詰めかける。

 「浮草」は大ヒットする。喜八とゆきはその映画を観に出かける。しかし、喜八は娘の姿をスクリーンで見ながら、静かに息を引き取る。その頃、「蒲田まつり」で小春は何も知らずに「蒲田行進曲」を唄っていた。知らされた監督は、「娘の晴れ姿を見ながら死んだか、旅役者のおとっつあんは」とつぶやくのであった。

 これは、小春と喜八の物語である。小春はスターへの第一歩を踏み出すが、単なる成功物語ではない。その底を流れるのは、そこはかとない哀しさである。それが、この映画の「いのち」である。単なる成功物語なら、底の浅い、軽薄な物語になっていただろう。それを許さないのが山田洋次監督である。「キネマの天地」はそういう映画である。



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