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‘14年夢日記 「『梅の木のある家』を読む」

2014(H26)年7月2日(水) 晴れのち曇り

   タイトル 「『梅の木のある家』を読む」

 「梅の木のある家」は、長瀬佳代子の3冊目となる短編小説集である。この小説集には10の作品が収載されている。ただ、「季節の終わり」という作品は、創作的なノンフィクションの作品である。が、創作といってもいいすぐれた作品となっている。最近8年間の作品を選んで短編小説集として編んだものである。

 彼女は1937年生まれで今年77歳になる。第一作品集は「冬が来る前に」、第二作品集は「春の日の別れ」というものだが、今回の短編集は今までのものとは、モチーフもテーマも少し異なっている。今回は自身の年齢を色濃く反映したものになっている。つまり、高齢者の生き方に視座をおいたテーマを、追求しているということである。

 小説の内容は、風土や自身の仕事、自身の思想、生き方が反映するものだが、これは年齢という問題を反映している。彼女はいままで、テーマとして福祉問題を追求してきた。それは彼女が携わってきた福祉の仕事からくるものである。それらの作品は、いつも弱者の側に寄り添って、温かい眼差しで登場人物を描いてきた。

 今回の小説集も、その視座は変わらないが、高齢者たちの生き方、在り方を問うものになっている。本の表題にもなっている「梅の木のある家」の主人公「わたし」は70歳である。脊椎の神経が犯される難病をもっている。その主人公は独り暮らしである。主人公は、これから先この家に独りで住みつづけてゆくことができるのか、という問題がある。それを追求した作品である。

 「谷間の小屋へ」という作品は、深刻な問題をあつかっている。主人公の武史は78歳で、妻の民代は80歳である。民代は盲目で、自分の身の回りのことができるだけだ。武史は肺がんに罹り、余命いくばくもない。民代を独り残して、先に旅立つことはできないと考える。色々と考えた末に武史が出した結論は、民代を道連れに一緒に死を迎えるということだった。

 この作品は、午前7時から午後5時30分までの10時間30分の物語である。民代には何も知らされていない。が、武史は自分が計画した通りの10時間30分、終焉の一日を送るのである。寺に行って、先祖の永代供養を頼み、民代をオルゴール館に案内する。オルゴールの音色の響き、それがあまりにも美しいので結末との落差が大きく、読者の胸が痛むところだ。

 いよいよ谷間の小屋へ、民代を民剤で眠らせ、自身はウイスキーを飲んで深い眠りに落ちる。その直前に小屋の藁束の中にマッチをすってさしこむ。この作品は救いようがないような作品である。他に民代を生かしてゆく選択肢はなかったのか、という疑問も残る。が、作者はこの作品を描くことによって、読者に問題を投げかけている。

 このように、この小説集は高齢者問題をテーマにして、それにアプローチしている。それぞれの作品は高い水準を保ち、「油彩でなく水彩画のような作品」という辛辣な評価にも関わらず、すぐれた作品集となっている。とくに、「季節の終り」という作品は、ノンフィクションであるだけに、その切実さが読む者の心に迫ってくる好編だ。長瀬佳代子の筆力の高さを窺わせるものである。



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