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‘14年夢日記 「『みちしるべ』を読む」

2014(H26)年4月23日(水) 晴れ

     タイトル 「『みちしるべ』を読む」

 「みちしるべ」は「民主文学」5月号に掲載された、新鋭短編特集のなかの1編である。作者は、中村恵美で以前、東日本大震災の津波をテーマにして、リアルな短編を書き、それを読んだことが記憶に残っている。

 「みちしるべ」は新しいテーマに挑戦した短編で、作者の進化・成長をうかがわせる好編となっている。主人公は佐藤可奈で、春からアルバイトとして地元の予備校で国語の講師をしていた。が、ある時、事務長に呼び出され、系列の私立峰杜高校へ教員として働いてみないか、という打診があった。

 とりあえず、非常勤の採用ということだが、年度末更新の時に正規の専任教員への推薦があり、それによって次年度から教員として働くことができるということである。可奈は両親とも相談して、峰杜で働くことを決めた。

 可奈は職員会議の前に、自己紹介をし、つづけて各科ごとの主任が歓迎の挨拶をした。最後に自動車科の渡辺が、「どうも、もうすぐなくなる自動車科の渡辺です」と言って、首を軽く手刀で切るしぐさをした。

 可奈は校長室にふたたび通され、自動車科のことを尋ねた。「自動車科はすでに募集停止してまして、あと五カ月で廃科なんです」と校長は言った。可奈は月がわりから高校に赴任した。急ごしらえの指導案をもとに、週明けから授業をもった。

 特進科と総合科が入る真新しい三階建ての新校舎には、全室冷暖房が完備され、対して自動車科はプレハブ校舎だった。自動車科が冷遇されているのは、新入りの可奈の目にも明らかだった。

 「最近の自動車科に対する風あたりはもう、本当にひどくて。廃科の話だって理事長の鶴の一声ですよ」渡辺は可奈に向かってそう言った。「理事長はまえから自動車科をつぶしがってたんです。特進科をつくったのも、手のかかる生徒より最初から頭のいい生徒を集めて、イメージアップしようって思いつきですよ」

 年が明けて始業式の日、雪の舞う駅前では、峰杜の保護者がチラシをくばり、署名を呼びかけていた。「私たちはおこってるんです。今夜、廃止反対の集会を行います。ご参加をお願いします」マイクから、そんな声が流れていた。

 集会は放課後、学校近くの公民館で行われた。可奈はおそるおそる会場に足を踏み入れた。「うちは、二次募集でようやく合格して、自動車科が息子を救ってくれて感謝してました。それが入学した途端に廃科って、なんですか」保護者の言葉だった。

 しばらくして、会場の入口でざわめきが起こった。渡辺に手を引かれて、杖を突き、痩せた初老の女性が片足を引きながら現れた。本山先生だった。先生は転勤してすぐに脳卒中で倒れたが、ここまでよく回復したのだった。

 「学期途中に、本山先生を学級担任からはずし、さらに系列校への異動を強要しました。ほかにも組合員ばかりをねらって異動や出向など、あからさまな組合つぶしに出ました」渡辺は訴えた。

 「わたくし、の、い、異動は、ふ、不当労働、こ、行為です。こ、これから、ろ、労働、委員会に、訴えて、か、かならず、また、み、峰杜に、戻ります」
本山は、そこまで言うと、マイクをぐいと高く突きあげた。会場がどよめき、わき返った。そこに、可奈のすすむべき道がしめされている、彼女はそう思って、ひたすら手を打ちつづけた。

 この作品は、自動車科の廃科という保護者と生徒に痛みを押し付けることと、組合つぶしが一体のものとしてすすめられていることを浮き彫りにしている。それを巧みに描いた優れた短編である。

 これで、新鋭短編特集の5編に触れてきたが、いずれも印象深い作品ばかりであった。民主文学会も高齢化がすすみ、若い書き手が待たれているが、この5編をみるかぎり、希望と展望のひらけるものとなっている。これらの若い作家たちのさらなる健筆を祈るものである。



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 1947年生まれの68歳で、
「新日本歌人協会」の会員です。
 短歌創作を通じて、平和と民主主義をめざしています。
 住所は岡山県浅口市寄島町です。
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 名前は「千春」ですが、男性です。

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