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‘14年夢日記 「『黄金の国』を読む」

2014(H26)年4月21日(月) 曇り時々雨

     タイトル 「『黄金の国』を読む」

 「民主文学」5月号に掲載されている、加藤康弘の「黄金の国」は、異色の作品である。文章が魅力的で、それだけでも読者を小説世界へといざなうものを持っている。「二〇〇七年九月のヤンゴンは曇り空が続いていた。」という、冒頭の一行で私はその世界へと引き込まれていった。

 異色の作品というのは、主人公がミャンマーのシャイリンであり、そのことだけでもそのように位置づけられる。シャイリンは、地方からパソコンを習うためヤンゴンに出てきていた。そのヤンゴンは、連日大勢の市民のデモが続き、市内には警官や軍人が武装して異常に緊迫した日々が続いている。

 シャイリンに大きな転機が訪れたのは、そんな激動の最中であった。その日シャイリンは友人のココラットと共にデモに参加していたのである。シャイリンが、今回のデモに参加したのには大きな理由があった。それは祖父の影響である。シャイリンの祖父は一九八八年の民主化デモなど、ミャンマー民主化のために命がけで闘ってきた闘士だった。

 その祖父は、検挙され悪名高いインセイン刑務所に送り込まれて、獄中でなくなったのである。そんな祖父をシャイリンは尊敬していた。だから彼がこのデモに参加するのは至極自然なことであった。が、このデモで、友人のココラットは、軍につかまってしまった。

 その後、シャイリンはタイ国境付近に逃れ、ブローカーの伝手で日本に渡った。そして、外国人支援センターの職員である優香と知り合ったのである。彼女は日本語を教えるボランティアもやっていた。

 シャイリンは、日本で何年か職を転々として、真一のいる西山マシンツールズに就職した。この職場は、社長と従業員が二人で、そのうちの一人が真一だった。シャイリンが日本にきて、心を常にとらえていたのは、家族とココラットの安否だった。日本で生活してきた五年間はそんな苦悩の日々だったのである。

 そんなある日のこと、シャイリンと真一は喧嘩になり、烈しい殴り合いをした。そのことを優香に話すと、先に手を出したシャイリンが悪いという。優香は「謝ったほうがいい」といった。しかし、シャイリンは悩んだ。

 だが、シャイリンは真一に謝って和解すると同時に、心が通じ合うようになる。その頃、祖国はかわりつつあった。連邦議会補欠選挙でNLDから四十四人が立候補して、四十人が当選して大勝した。が、全六百六十四議席の中の四十人である。が、ようやく、自分たちの声が政治に反映される時代がやってきた。

 シャイリンは、そんな中で祖国に帰って、母国を変えたい、という思いを強くしていた。それを優香に告げると、彼女は「軍政はまだ政治犯を釈放していない。いま帰ると危険だ」と止めたが、シャイリンの気持ちは変わらなかった。

 そのことを真一に話すと、彼は俯いたままだった。真一は、じっと下を向いたままポタポタと涙を流していた。夕日が工場の窓から見えている。それはシャイリンには、黄金の国への道標のように赤々と輝いてみえた。

 この作品は、ミャンマーの政治が大きなうねりとなって、変革されようとしている動きが背景としてあり、その中でシャイリンの生き方と真一の友情を掬いとったものである。異色の作品ということができるだろう。

 また、文章がとても流麗で、物語とともにそれがひとつの魅力となっており、読後感もとても爽やかで私の琴線に触れてくる作品であった。まだ四十二歳、これから期待される作家である。



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