スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

‘14年夢日記 「『恋風』を読む」

2014(H26)年4月20日(日) 曇り時々晴れ

     タイトル 「『恋風』を読む」

 「恋風」は「民主文学」5月号に掲載された、新鋭短編特集の短編小説である。作者は「民主文学」で時々目にする石井斉で、私の好きな作家のひとりだ。「恋風」は私の心にひびいた作品なので、少しく触れてみたいと思う。

 この作品は、特にストーリーというものはなく、統合失調症を患って入院いる妻の久美が、外泊の許可を得て帰ってくる日に、夫の智の行動や心の動きなどを描出した小説である。

 主人公は私で、一人称で話は展開されている。久美は東日本大震災で、統合失調症が再発した。「きゃあ」、「でかい」、大きな揺れが来て、私と久美は肩を抱き合った。が、幸いに家具が倒れたり、本棚から単行本が散乱したりする事もなかった。

 「智、今日も眠れなかったらどうしよう。また地震が来るよう」、「怖いよう」と、久美は繰り返した。私は久美の黒髪を撫でながら言った。「病院は今日休みだから、明日、必ず行こう」。そして、精神科病院へ連れていくと、即、入院となった。

 その久美が外泊の許可を得て帰って来る。私は久美の好きなカレーライスを作って食べさせようと思う。そして、自転車で大型スーパーへ買い物に出かけた。私はスーパーで、カレーのルーを見つけようと店内を回った。私はそこでルーを買い、米や豚肉、牛乳を求めた。「待ってろ、久美。旨いカレーライス、作ってやるからな」と私は呟いた。

 久美の入院中のことが思い出された。私が見舞いに行くと、とても症状が悪くなっていて、久美は閉鎖病棟に入っていた。看護師は鉄格子のはまっている扉の鍵を、音を立てて開けた。私は看護師に両手で身体検査をされた。

 久美は起きていて、私と眼があった。「久美」と呼びかけたが、返事は返ってこなかった。私は無理に笑顔を作り、言葉を探しながら言ったが、久美は私を見つめているだけで無言だった。私は久美の手を握った。別れる時がきたが、もっと久美のそばにいたかった。久美を抱きしめたい衝動にかられた。

 スーパーからの帰り道、自転車がパンクしたので、アパートまで押して帰った。我が家は他と比べて見劣りがしたが、雨樋には黄色いタオルを縛り付けていた。それは、「幸福の黄色いハンカチ」に倣ったものだった。

 久美を迎えるためのカレーライスを焦がしてしまった。カレーライスを失敗してしまったので、久美のために桃色のガーベラを買うことにした。そして、歩きながら久美を想った。久美と一緒の時を過ごせればいい。それだけでいい。爽やかな風が、私を包んだ。

 この作品の智も統合失調症を患っている、精神障がい者だった。智も久美も精神の病に罹っていて、このふたりの生活の在りようがよく描かれている作品である。

 特に、智の久美に寄せる愛情が、この作品の核をなしている。外泊許可の久美を迎える智の喜びと行動に、読者は共感を寄せる。この作品はストーリーをただ単に追うのではなく、重層的に描くことによって、平板ではない物語をつくっている。

 何よりも、この小説の優れたところは、「恋風」という題名のように、ふたりにとって、新しい愛情、新しい恋を描いている点である。通奏低音のように、久美に寄せる愛情が流れており、重い題材でありながら、とても温かい作品に結晶化している。



スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

FC2USER634322BTA

Author:FC2USER634322BTA
FC2ブログへようこそ!

 1947年生まれの68歳で、
「新日本歌人協会」の会員です。
 短歌創作を通じて、平和と民主主義をめざしています。
 住所は岡山県浅口市寄島町です。
 青い海と緑の山、青い空をもつ素敵な村です。
 名前は「千春」ですが、男性です。

♪♪♪リンクは、ご自由に!

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。