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コムコム短歌会

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松野さと江 歌論 2018年12月分

三日かけ八枚の障子張りかえる八十一歳われのあっぱれ           山口智子

 具体的で、とってもよくわかり、結句の「あっぱれ」は「あっぱれ、あっぱれ」です。

添削
三日かけ障子八枚張りかえし八十一歳の我にあっぱれ

 すこし変えてみましたがどうですか。「し」は「過去回想」の「き」の変化したものですが、「存続」の「き」もあって、充分使用されている「助詞」のようですので。「張りかえおえた」という意味になるのですけれども……。

ピーマンの葉を炒り煮せし姑思い季節の終りの小さき実も採る       芦田美代子

 私はなつかしく母の料理を思い出します。とてもなつかしい味です。すこしほのにがいのが特徴です。
 さて、ですが、
ピーマンの「葉」が、どうして実の歌になってしまったのですか。「実も採る」の「も」は「葉」もとったけれど、実もとったということなのでしょうけれど……。どこまでも「葉」に焦点を決めた方がいいでしょう。

秋雨はキャンバスに描(か)く絵の様に輪を描きつつたおやかに降る        斉藤玲子

 雨が輪の紋を作っているわけですね。残念なのは、一首の中に描くが二度出てくるので、どうかしたいですね。
 もうひとつ、「秋雨は……たおやかに降る」につながっていくわけですけれども、余りにも離れすぎた感じがするのだけれど、どう思う? 「キャンバスに描く絵の様に」の比喩は素敵なので、これを生かして
 
添削
キャンバスに描く絵の様に秋雨は輪の紋ひろげたおやかに降る

 とすることもできます。


去年植えし金木犀に花咲きて仄かに薫る寒露の朝(あした)             中山芳樹

 この歌、季節の凛としたものが伝わってくるよい歌と思います。
 わざわざ「寒露」とした作者の思いを大切にしたいと思いました。

セザンヌの梨の転がりそうなれば絵に手を伸ばし置きかえようか       渡辺和美

 発想がみずみずしいので楽しい歌。作者の責任ではない面もありますが、あの絵を知らない人は理解出来ないかもね。「絵」の位置を変えるとすこし解かりやすくなるかも知れませんよ。

添削
セザンヌの絵の梨今にも転がりそう両手を添えて置きかえようか

 そうすると、ああ「絵」のことなのかとぐらいは解かると思うよ。
 また、「ば」……「ば」という助詞を使うと「原因……結果」というひびきになり、理屈っぽい歌になりがちですので、注意して使ってみて下さい。

沓き日に労組で夜毎論議せし原発事故の行方は知れず            竹中君江

 本当に「原発事故」はどのようになっていくのでしょう。歌に表現するのもむつかしい大切な内容を持つ歌。
 ところで「沓き日」に労組で論議したのは、「原発事故」のことではなく、それより一歩前の、「原発」の是か非かの問題だったのではないかと思います。その為、最近になって、かくも恐ろしい結果を露呈した「原発事故」を「論議せし」とすると多少無理のようにも思えます。「沓き」は余りに遠いので、「かつて労組で」くらいではどうですか。
添削
かつて労組で夜毎夜毎論議せし原発事故の行方は知れず
 「行方は知れず」ではすこし弱いひびきが残念です。「……今後どうする」「……これからどうなる」等々……。

小春日に柿の簾を眺むれば今亡き祖母ぞふと甦る             速水健太郎

 祖母をなつかしむ歌。気持はよく通っている歌です。
 しかし、「ば」という助詞は原因・結果。すなわち、……なので……となります。という散文的ひびきになる恐れがありますので、注意がいる「ば」です。勿論、使っていけないわけではありません。具体的なものをすこし入れてみましょう。

添削
干し柿の簾の赤き小春日か縁に皮むく祖母甦る

……背中の丸き祖母甦る
……皮むく祖母のしわの手思う  等々……

 「ぞ」は少し強いかしらね。

病室に白飯かき込む母ありて見てはいけないもの見た心地す        山田三津子

  母は作者の本当のお母上ですか。それとも、一般的ないわゆる「母」ですか。自分の、実在の母として味わいましたが……。作者は繊細な心と目を持っています。「かき込む」ことは、あまり日常にはしませんものね。汁かけごはんというのもありますけれども……。
 母と娘。しかし、人間と人間。良い歌と思います。

小春日に家族そろいて墓参り落葉に混じりしマムシのとぐろ         松田典久
 
 マムシさんも小春日に、よい気分だったのでしょうね。しかし、おどろいたでしょう。さて、三句の「墓参り」は体言です。述部がほしいところ。
添削
家族して墓参りする小春日に落葉に混じりマムシのとぐろ

うちつけに脳出血で倒れたる義姉(あね)よふたたび立ちて歩めよ          鬼藤千春

 無理のない、情の通ったよい歌と思います。
何もいうことはないのですが、結句の「立ちて歩めよ」が多少、表現として月並みで、流れた感じ。ぜいたくすぎるかなあ。むしろ、「歩めよ」をとって、「立ちてくれぬか」にした方がいいかなあ。

軽自動車冷却水が空になる赤旗配達赤ランプ点く              目賀和子

 内容はそれなりにわかりますが、文として正しく表現されていないと思います。また「助詞」の省略が気になりました。
添削
自動車で「赤旗」配れば冷却水の空を知らせる赤ランプ点く



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